おとなの学校
特別対談

生涯青春!

第3回目

G3sewing【じーさんソーイング】

斉藤 勝さん・陽子さん

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株式会社 おとなの学校 代表

大浦 敬子

三重県四日市市のご自宅で、がまぐちバッグを看板商品にソーイングに勤しむG3sewingのG3(じーさん)こと斉藤勝さんと、B3(ばーさん)こと陽子さん。
にこやかに笑う87歳のG3、かつては数々の病気に見舞われほぼ寝たきりだったという。
診療費もかさむなか、年金3万円で心身ともにギリギリで暮らしていたG3を変えたのは、82歳で出合ったミシンという新たな生きがいだった。

G3sewing

工場長・指導員を務める

G3こと斉藤 勝さん (87)

品質管理・主任を務める

B3こと斉藤 陽子さん (83)*ご年齢は対談当時のもの

1968年(昭和43年)に結婚後、4人の子宝に恵まれながら、波乱万丈な人生を歩んできた。電気修理からスナック経営まで、職人気質なG3はさまざまな事業を営みつつも、借金に苦しみ貧乏だった時代も長かった。68歳以降、G3は大動脈解離など生死を彷徨う大病を患う。うつ病にも罹患、自殺未遂事件もあったほどだった。そんなG3をいつも大らかで明るいB3が支えてきた。ふたりは今「人生でいちばん楽しい」と笑う。

ミシンとの出合い

敬子:

G3(じーさん)こと勝さん、ご病気がちだったんですか?

G3:

はい。

B3:

もうね、1番最初は大腸。そこが擦れて大出血した…

敬子:

あら!

B3:

大出血。それから入院して。それからが、病気ばかりして。

敬子:

病気ばかり。それで、引きこもりがちになっていたときに、ミシンと出合われたんですね。

G3:

そうです、はい。

敬子:

娘さんから「ちょっとミシンを直して」って言われたら、すごーくミシンに興味が出てきたと。

G3:

いや、直しはもう簡単にね、すぐ直るでね。そういうのは得意やもんで。

敬子:

それでミシンを直してみて、ちょっと試し縫いかなんかやったんですって?

G3:

そうです、試し縫いで、なんか雑巾みたいに、バーっと縫えてしまったんでね。あ、面白いやないかいって。

敬子:

面白かった!

G3:

うん。面白いやないかと思って。これ、なんかできるんじゃないかなと思って。それがきっかけですね。

がまぐちバッグの誕生、そしてお仕事へ

敬子:

娘さんががまぐちバッグがお好きで、「がまぐちのバッグを作って」っておっしゃったんですね。

G3:

そうですね、がまぐちバッグの金具を持ってきて、これ作ってくれんかちゅうて。簡単にできるってゆうたけど、ところがね、なかなか難しかったね。

B3:

誰も先生がおらんと、教えてもらう先生がおらんかった。

G3:

自分で型紙からこしらえてね。

B3:

自分でみんな作って考えて。

G3:

やっぱり自分の得意なことがないと、張り合いがないね、簡単にできるとね。

敬子:

なるほど。簡単にできると、つまらないんだ。

G3:

つまんないです。で、苦労して、苦労してできたとき「あ〜できた〜!」って、その喜びは他には代えられんね。

敬子:

素晴らしい〜。いや〜でも、お孫さんのアイデアでSNSで発信を。

G3&B3:

そう、そう。

B3:

このおじいさんがね、自分で考えて、何もかも作って、作りあげたのを、もっとみんなに知らせなければあかんって言って、そのTwitter(現・X)でね、やってくれました。

敬子:

それで、そこから、この趣味のようにして作っておられたバッグがお仕事になったんですね。

B3:

そうですね。

今がいちばん幸せ。57年目の結婚指輪

敬子:

おふたりがこうやって、G3sewingのおかげで生活が落ち着いてきて、プレゼントの話があったと聞いておりますが(笑)。

B3:

(笑)もうね、本当にこの仕事するようになってね、ようやっと余裕ができるようになって。ほんまに、ほんまに昔とか財布にね、硬貨しかなかったぐらいの苦しい生活しとったんね。

B3:

ほんと辛かった〜もう。本当に借金まみれでね、もう、本当に辛いことばっかり。この人も辛かったと思うのよ。ふたりがやっぱ夫婦やて、みんな何事にしても辛い生活しとった。
だけど結婚から57年目にね、あ〜結婚記念日だって。こんな年齢になってしまったけども、お父さん、ちょっと今からイオン行ってくるねって。「そうか、行ってこい」って。「じゃあお前の好きなものをね、どんだけお金が掛かってもええで買ってこい」って。
やっぱり、自分は指輪が欲しかったわけ。指輪を買って欲しいから指輪のとこ行って探しとって。あーよし、これを記念にこの指輪を買うてもらった。私が、ようやっと自分の思いの指輪を買ってもらうことができたっていうその喜びで、ほんまに嬉しかった。

敬子:

いいお話。ね〜素晴らしい!

指輪よりも幸せを感じるもの

B3:

もう本当にね。朝起きたらちゃんとね、「朝か、今日いちにち頼むわね」って。
寝るときは、「今日いちにちありがとね」って。そこまで言ってくれてね。私、その言葉がもう忘れられへん。これがいちばん、やっぱり嬉しい。昔はどうであってもね、今が楽しいね。娘たちに囲まれてこの仕事をするようになってね、どんな苦労でも苦労と思わん。

敬子:

素晴らしい。奥様から色々と素敵なお話がありましたので、今の生活はどうですか。自分的に幸せだなとか、楽しいなとか。

G3:

今楽しいね。

敬子:

楽しい!

G3:

うん。楽しい。いちばん楽しい。

G3:

幸せっちゅうより、楽しいね。
孫が、ひ孫までできてさ。

敬子:

素晴らしい。

G3:

うん。何よりもみんなとご飯。バーっと来たときに食事するのがいちばん楽しいね。
うん、何よりも。何にも代えられんね。

B3:

もう昔のその苦労が逆になってね、今は何食べとっても楽しい。おいしいの。嬉しいの。うん、それがまず今の状況ですね。

G3:

食事がおいしいっちゅうことはね、幸せっちゅうことね。
うん。いくらお金があっても、何食べとってもおいしゅうない。

B3:

おいしゅうなかったもん。

G3:

やっぱり今やったら、もうお茶漬けでもおいしいもんね。

B3:

おいしい。

ふたりの生きがい

G3:

幸せって、お金と違うね。

B3:

ね。みなさんからお手紙やら品物やら、いっぱいいただいて。
こちらは作ってお金もらっとんのに、作ったバッグのお返しにね、お礼状や贈り物などをね、いただくんです。もう、そういうのが私の本当の生きがいです。ファイルが9冊になるくらい、お礼状が来てるんですよ。それがふたりの生きがいですね。
ものすごく嬉しいことです。

敬子:

では、今日はG3sewingのおふたりにお話を伺いました。
私もう、感動いたしました。末永く、末永く、ご家族様で、お幸せにお過ごしになることを心から祈っております。
今日は、どうもありがとうございました。

G3&B3:

ありがとうございました。

G3sewingのおふたりの
生涯青春!の軌跡

G3、若い頃

7人きょうだいの長男として生まれ、実家のラジオ店の後を継ぐ。電気工事士として、テレビやラジオの修理をしていた。腕は確かで、優秀な技術者に贈られる日本ビクター(当時)からのブロンズ像などをもらっている。

G3(31歳)B3(26歳)、結婚

お見合いで出会ったふたりは、1968年(昭和43年)に結婚。この写真は引っ越すたびに、必ず一緒に移動する数少ない大切なもの。家族仲が悪くなったときも、山あり谷ありの人生のなか、いつも見守っていた写真。

G3&B3が働き世代の頃

一男三女の4人の子どもに恵まれる。電化製品の修理、スナック経営など、さまざまな仕事をしてきたG3。この写真は事業が順調だった頃。この後貧乏暮らしになり、借金の取り立てが来たり、水道すら止められそうになる。

G3、82歳でミシンに出合う

大腸の摘出、大動脈解離、糖尿病やうつ病など、68歳をすぎてG3は病気に苦しむ。年金月3万で生活も苦しく寝たきり状態がつづいた。一時は自殺未遂に及ぶほどだったが、82歳でミシンに出合ってから人生が一変。

82歳で、G3sewingが始まる

ミシンを始め、簡単な小物からさまざまな試行錯誤を経て、がまぐちバッグが完成。この写真をTwitter(現・X)に載せたら大反響、一度に800件もの注文が殺到。家族一丸で1年半をかけてお届け。G3sewingの誕生へ。

G3(83歳)で57年目の指輪を贈る

G3sewingで初めてまとまった収入を得たとき、苦労をかけたB3に贈り物の提案をする。B3は結婚指輪をリクエスト、ふたりで最寄りのイオンへ。B3はG3の気持ちとしての証がほしかったそう。苦しい時代を乗り越え、今いちばん仲が良いふたり。

G3sewingの現在

三女・千里さんのご家族と。千里さんが現在G3sewingの代表を担い、ご家族やきょうだいが協力してG3sewingを運営している。孫やひ孫を含め、家族が集まっているときが楽しくて幸せだと語るG3とB3。

生きがいと原動力

がまぐちバッグを購入してくれた方々からのお礼のお手紙。「ラブレター」といって大切にファイリングして、時々読み返して元気をもらっている。ふたりにとってのかけがえのない宝物。

おとなの教科書を見て

敬子:

私、おとなの学校という会社をやっているんですけど、そちらでこの教科書を毎月発刊しております。こちらが今年の4月号と5月号なんですけど、開いてみていただけますか。

B3:

はい。まぁ〜すごいね。

敬子:

字も大きくて、写真も綺麗に載っています。例えばご家族でいろんな思い出がありますよね?

B3:

あるね。思い出すわね。

敬子:

そういった思い出を、この教科書を使いながらずっと思い出していただける内容になっています。心がほっこりしたりとか、それから心が落ち着いたりとか。本当にご家族様仲良くてらっしゃるので、特に4月号はお花見の話がいっぱいできるかなと思うんですよね。お花見にもたくさん行かれたみたいで。教科書を見ているだけで、どんどん昔のことを思い出すので、それが認知症予防になるんです。昔の思い出をぜひ皆さんで語っていただければと思います。

B3:

そうそう、思い出すことって大事だもんね、高齢になるとね。

敬子:

ぜひせひ。教科書も楽しんでいただければと思います。

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