おとなの学校
特別対談

生涯青春!

第2回目

82歳の現役女子高校生

村田十詩美(としみ)さん

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株式会社おとなの学校 代表

大浦けいこ

大阪にある定時制高校、大阪府立寝屋川高等学校に通う村田十詩美さん。
往復約1時間の距離を、電車を使いながら毎日元気に登校している。
自身のひ孫ほどの年齢の若い子達と肩を並べながら学び、青春の日々を送る村田さんと対談した。
教室には終始、村田さんの元気な笑い声が響いていた。

村田十詩美さん (82)*ご年齢は対談当時のもの

現役の女子高校生。学生時代、親の病気で働くことを余儀なくされ、学校へ通えなくなった。
自身も結婚し、4人の子供を育てるなか、68歳まで働き詰めの人生だった。
3年悩み、念願だった学校へ行くことを決意。夜間中学へ9年通い上げたのち、
入試を経て高校に合格。大阪府立寝屋川高等学校へ通っている。

高校に行こうと思った理由

けいこ:

さて、村田さん、なぜ高校に通おうと思われましたか?

村田さん:

そうですね、私の、ひとつの夢だったんですよ。
私にとっては義理の父だった人が、お母さんと結婚して1年くらい経ったときに、脳卒中で倒れて中風になったんですよ。それで、父が働けなくなって。
お母さんのお腹に弟がおったからね、私が働かないと仕方がないから学校には行けなくなりました。中学校の真ん前に酒屋さんがあったんですが、そこで寝泊まりさせてもらって。

けいこ:

泊まり込みで?

村田さん:

そうそうそう。
やっていたのは、あかちゃんの子守りです。

けいこ:

やっぱり小学校に行けずに、働かねばならなかったというのは、大人になってから勉強をもう一回したいなという思いがありましたか?

村田さん:

ありましたね。
本が読めても、漢字が書けないんですよ。せやから、ずっと思ってましたよ、学校行きたいというのは。

70代からの学生生活

村田さん:

せやから、働くのを68歳で卒業したんですよ。
ほんで3年間迷って、夜間中学に電話させてもらったら、向こうの先生が、「見学に来てください」って言ってくれました。それで、教室に入らせてもらったら、私より年上の人が多かったんです。

けいこ:

へぇ〜!!多かった?

村田さん:

はい。これだったら私も行けるわ、と思って(笑)。

二人:

ははははは!

村田さん:

最初は2〜3年中学校に行って、それから高校へ行こうと考えてたんですけど、あんまりにも中学が面白くて、そこに9年いてるんです。私の頃は、先生が認めてくれたら卒業できることになっていたんですけど、そこで、結局、まるまる9年行ってたんです(笑)。

けいこ:

楽しかったんですね!

村田さん:

そうですね。まぁ、年いった人ばかりでしたからね。勉強するときは本当、先生の声しか聞こえないんです。水を打ったようにシーンとしてみんな、真剣に勉強してはりました。本当に先生の声以外何にも聞こえない。それでも、面白かったです。

けいこ:

なんというか、新しいことを学ぶというのが楽しい?

村田さん:

そうですね。それもあるし、やっぱり、昔のことをよう知ってる人ばっかりだから、そういう昔話で笑ったりして面白かったですね。

けいこ:

今は、高校になったわけですけど、中学よりもさらに、高校に来て楽しいところはありますか?

村田さん:

そうですね。若い子の話を聞いていると面白いですよね。

けいこ:

今の若い子と会話していると、どんなところが楽しいですか?

村田さん:

今の若い子がしていることを聞くと、「あ〜そうか、こういうこともしてるんや」と思ったりね。発見がありますよね。

けいこ:

やっぱり自分が若いときとは違う?

村田さん:

そうそう!
せやから、若い子が偉そうにしてたら、あんたちょっと贅沢やでって(笑)。

好きな科目は「数学」

けいこ:

そんななかで、勉強することは、子供の頃から好きだったんですか?

村田さん:

そうですね。割と好きな方やったかも分かりませんね。数学がいちばん好きでしたから。

けいこ:

へぇ〜〜〜!

村田さん:

ここへ来てね、自分の好きな科目をよれるんですよ。よれるというか、選べるですよ。そしたら、数学が3科目あるんです。それを私、みんな取ってます。

けいこ:

数Ⅰ 数Ⅱ 数Ⅲみたいな?

村田さん:

そうそうそう。

けいこ:

マジですか!

村田さん:

そしたら、みんなが「なんで村田さん、数学がそんなにようけあるの?」って言うから、「3つあったから、3つ取ってん」って言うたら、「俺ら、1個でも嫌やわ!」って(笑)。

二人:

ははははは!

けいこ:

数学が好きって、割と少ないじゃないですか。

村田さん:

そうですねぇ。

けいこ:

でも、問題を解いていると、ワクワクするとか?

村田さん:

だんだん難しくなっていくほど、覚えるのも難儀するけど、やっぱり、やめようとは思いませんね(笑)。
わからんかったら、前の夜間中学の先生に聞きに行ったりね。

けいこ:

へぇ〜〜〜!
もう、好奇心の塊ですよね。

村田さん:

ははははは!

けいこ:

なんかこう、毎日毎日が楽しいですか?

村田さん:

もう、休みがいらんくらい楽しいです。ははははは!

村田さんにとって学校はどんなところ?

けいこ:

さあ、本当に学生生活を楽しまれている村田さんですけども、村田さんにとって、ズバリ学校ってどういうところですか?

村田さん:

学校ってね、どういうところ…?
面白いところかな。

けいこ:

面白い。

村田さん:

私にしたら、退屈ではないところ。

けいこ:

退屈ではないところ。

村田さん:

毎日来て、毎日違うことがわかるところ。
友達の違うところもわかるし、「ああ、この子はこんなんやったんや」とか。せやから、私にとっては本当にいちばん面白いところかな。

けいこ:

一番面白いところ。

村田さん:

うん。テレビ観るより面白い。ふふふふ。

けいこ:

ね〜、テレビ観るより、絶対面白いですよね、学校って。
いや〜素晴らしいと思います。
私、ずっとこう、村田さんにはこうやって女子学生のまんまでいてほしいです。
ずっと高校生で、次は大学生でいてください。

村田さん:

ははははは!

けいこ:

今日は楽しいお話どうもありがとうございました。

村田さん:

いえいえ、こちらこそありがとうございました。

村田十詩美さんの
生涯青春!の軌跡

七五三の時の村田さん。
過去の引越しでアルバムがなくなってしまい、いま唯一残っている幼少期の大切な一枚。

二十歳くらいの村田さん。
ご自宅の裏庭で、我が子である第一子の長女と。17歳で結婚し、若くして母となった。

三十歳頃。
当時働いていた会社主催のバーベキューで同僚と。日中は子供を保育園に預けながら、日用品の販売会社の営業をしていた。

34~35歳頃、近所で。
4人の子どもに恵まれ、仕事と家事育児に邁進していた日々。

54歳のとき。
娘家族に誘われて訪れた和歌山アドベンチャーワールドにて。動物が好きで、この時、虎の赤ちゃんも抱っこした。

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